小高い丘に建つセンスのよいワイナリー。大きな窓のある開放的な店内からは、眼下に青々としたブドウ畑、遠くには阿武隈山系の山なみが眺めらます。ゆったりと心地よい時間が流れ、まるで別世界にきたかのような空間で、マネージャーを務める四家麻未さんにお話しを伺いました。
震災を乗り越え誕生したいわき初のワイナリー
いわきワイナリー誕生のきっかけは、麻未さんの父・今野隆さんが福島県広野町でぶどうの栽培をしたことから。
身内に障がいを持つ方がいたこともあり、「今後、ぶどう栽培やワインの醸造を通して、ハンディキャップを背負った人たちが自立した生活を送れるようにできないだろうか…」と平成20年にぶどうの栽培がはじまりました。
「ゆったりとした時間の中で育まれるワインは障がい者に向くはず…」明るい未来を描いてのスタートしましたが、東日本大震災が発生。原発事故の影響により農園への立ち入りは禁止され、その半年後にようやく入ることができたものの、荒れ果てた農園を見て、苦渋の決断で広野農園を手放したそうです。
しかし、ワイン作りへの夢はあきらめきれませんでした。スタッフたちの懸命な努力もあり、震災から1年半後、農園をいわき市大久町へ移転。平成22年より開園していた好間農園と共に新たにぶどう栽培を本格スタートさせました。暑い夏を経て、ぶどうは大豊作。収穫したぶどうは、山梨県勝沼にある東夢ワイナリーの協力を得て、スタッフが何度も勝沼へ通い、オリジナルワイン作りに励みました。そうして出来上がったのが、いわき産ぶどうで初めて作った「いわき夢ワイン2013」。ようやくオリジナルワイン作りへの一歩を踏み出し、平成27年果実酒醸造免許を取得。その後、「いわきワイナリーガーデンテラス&ショップ」をオープンさせました。
試行錯誤を繰り返したゼロからのワイン造り
マネージャーを務める麻未さんは、大学時代には全く違う分野を学んでいたので、ワイン作りはゼロからのスタートだったそうです。
「お酒の中ではワインが一番好きなんですが、仕事にするのと好きなのとでは全然違い、知識が足りないと思い知らされます。他のワイナリーを見学させてもらい、作り手さんのお話を聞いたり、情報交換をしたり、海外へ視察にも行きました。ぶどうの育て方もそれぞれのワイナリーで工夫されていて、作り方もその人の数だけあるんです。勉強すればするほど奥が深くて、とにかく、毎日、毎日ワインのことばかり考えています。」
いわきワイナリーでは現在、年間1万8,000本を生産していますが、年間3万本の生産量を目指して、日々作業に取り組んでいます。ワインは木の年数により、味が変化し、どんどん深みが増していくのだそう。
「いわきワイナリーの木はまだ若いので、味も軽くてさらっとしています。そういうワインが飲めるは、今しかないんですよ。そして、一年ずつ、味に深みが出てくるのでその変化もお客さんに楽しんでほしいです。」
ワインを通して障がい者への理解を深めてほしい
そして、ワイナリー設立当初から目的としているのが、障がい者の方の自立支援。ワイナリースタッフと共にぶどう栽培からワイン製造まで作業を行っているそうです。
「メンバーさんの作業のやりやすさを考えながら、栽培から醸造まですべて職員とともに行っています。ワインは生き物なので、学びきれないことがすごく多いんですが、経験を積み重ねて、スタッフみんなで「美味しいワインを作ろう!」という目的を持って一緒に作業しています。そして、こういった場所があることで、障がい者の方への理解が深まっていけばいいなと思っています。」
ワインとスタッフさんたちへの愛情たっぷりに話す姿が印象的でした。いわき産初のワインをぜひご賞味ください。
店舗情報
会社名 | いわきワイナリーガーデンテラス&ショップ |
住所 | 福島県いわき市好間町中好間字半貫沢34-72 |
TEL | 0246-36-0008 |
営業時間 | 11:00~16:00(不定休) |
代表者 | 今野隆 |
販売店
いわきワイナリー、ほるる売店