呉服処根本

いわき駅前通りの入り口に立つ「呉服処根本」。創業は大正10年。100年近くも、街の移ろいを見守りながらセンスの良い呉服を届けてきました。現在は、風呂敷やちりめん細工の制作や紹介のほか、受け継いできた古き良きものを伝える活動をしています。

 

漁師の晴れ着「万祝」を商品に

 

まもなく創業100年を迎える呉服処根本の3代目根本紀太郎さん。 「私の祖父は着物しか着ない人で、荷物を持って蒸気機関車に乗って商いに行く背中を見て育ちました。幼いころから着物には慣れ親しんでいましたが、東京の大学へ出て、それなりの夢も持ちましたが、長男ということでいわきに戻り店を継ぎました。」根本さんが店を継ぎ、まず最初に始めたことがお客様回りでした。そこで、「万祝って知ってる?」とお客さんに声を掛けられたのが、「いわき万祝衣」誕生につながりました。

 

 

浜の文化を伝える逸品

 

万祝は、漁師の晴れ着として作られた和服の一種。静岡県から三陸までの太平洋沿岸で広まった風習で、大漁祝いの引き出物として、船主が漁師へ配った祝い着です。浜の方では昔からの風習で、今で言うボーナスのようなものとして万祝を感謝を込めて配ったそうです。万祝を仕立てて持っている漁師は、腕のいい証で、勲章のような漁師の誇りだったのだそう。
「私がいわきへ帰ってきた昭和60年代頃には、もうその風習はなくなっていました。でも、せっかく根付いていた素晴らしい文化を無くしてしまうのはもったいないと思い、こんな風習があったんだよと伝えるために、ミニチュアにした『いわき万祝衣』を作りました。」と根本さん。浜の華やかさ、豪快さが今に伝わる逸品です。

 

 

日本の伝統を伝える風呂敷伝道師として活動

 

現在、根本さんが力を入れているのが風呂敷講座。公民館や小学校など、市内各地で風呂敷の魅力を伝える活動を積極的に行っています。

 

 

「一枚の布で色々な包み方ができる風呂敷には日本人の知恵と工夫が詰まっているんです。今は色々便利になっていますが、「これにはこれ!」ではなく、ないならば別なものに変えてみようなど、発想を変えていくことも必要なんじゃないかと思います。昔はおじいちゃんやおばあちゃんと暮らして、風呂敷の結び方を学んだりしていましたが、今は核家族で、若い人たちは風呂敷を使ったことがない人が多いです。日本の良い伝統を忘れないでいくために、伝えることを大切にしていきたいですね」。
根本さんの人柄もあり、風呂敷講座は子どもからお年寄りまで好評です。日本の古き良き伝統を大切に思う気持ちが、多くの人に伝わっていくことを願います。

 

店舗情報

 

会社名 合名会社 呉服処根本
住所 福島県いわき市平字大町6-3
TEL 0246-23-2253
営業時間 10:00~18:00
定休日 日曜日
代表者  根本紀太郎

販売店

 

呉服処根本、ほるる売店